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右へ曲がる


一つ目の交差点を、右に曲がった。駐輪場はすぐそこだ。自宅から最寄り駅迄は少々距離がある為、いつも自転車を往復させている。いつもの位置に停めた相棒に、

ただいま

と心の中で呟き、しっかりと跨った。大通りを進み、飲食店街の端の方に来たところで路地へと入る。自宅はこの入り組んだ路地の奥にあるアパートで、そこへ辿り着く迄には、車一台がやっと曲がれるような小さな交差点が多数存在する。更に、事故が多発していた影響からか、殆どの交差点にはカーブミラーが連なっている。その姿は、まるで通行人を監視する大きな目玉の様だ。


無機質ながらも、妖しい美しさ。


毎日そこを通っていると、角を曲がるという行為に対して何だか特別な意味を感じる様になっていった。そんなことを考えるなんて、おっさんになったものだと思いつつ、いつもの道を進む。路地を入って暫くすると交差点が見えてきた。

よし、ここを曲がろう。






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